
顧剣亨。自身のスタジオにて
1994年京都生まれ、上海に育ち、現在は京都を拠点に制作するアーティスト、顧剣亨。2018年に京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)の卒業制作で発表したデジタル・ウィービングという独自の手法は、都市の風景などを撮影した複数のデジタルイメージのデータを抜粋し、それを「織る」ように再構成するもの。大画面で展開される、焦点や輪郭を結ばないイメージは、無限の奥行きと蠢きを体感させ、従来の写真鑑賞を超える体験と、視ることへの思索に誘う。2026年、東京・国立新美術館で開催し、京都・京都市京セラ美術館で巡回展が始まった「テート美術館 ― YBA & BEYOND 世界を変えた90s英国アート展」と同時に開催した「YJA(Young Japan-based Artists)」に選出された顧。作品に描いてきたビジョン、出品作について、京都にある自身のスタジオで話を聞いた。
──都市をテーマにした「Cityscape」シリーズは、朦朧としてグレーがかった都市のイメージです。多重撮影や合成のようにも見えますが、用いられている技法「デジタル・ウィービング」とは?
手法は、ルールとして、4枚の写真を使います。各都市の一番高いビルや展望台から4方向を撮影して、画像を1ピクセルごとに、行と列を手作業で削除、保留を繰り返しながら加工してゆきます。4枚を均等に4分の1のピクセル残し、それを1枚の写真に「織って」ゆく。これがデジタル・ウィービング(デジタル織物)という手法です。1枚のイメージのなかに、その都市の360度が入っている感じです。4枚の写真が合成されると焦点が違うので、どこを見ても遠近感が異なる。グレーの色は、黒と白の絵の具を混ぜると灰色になるのと同じで、写真のハイライトとシャドウの部分のピクセルが混ざり合うことでグレーになって、色も褪せていきます。
※画像をいただけますでしょうか?※
「Cityscape」シリーズ作品(できたら上海)の参考写真画像キャプ想定:都市シリーズ「上海」。窓のフィルムの色が強かったり、タワーがあったりして、都市シリーズのなかでも特色の強く出た1点。

──顧さんの出自にこじつけるわけではありませんが、中国の水墨の山水画を見ているような印象があります。
中国絵画はまだ勉強中で、時間と空間が包み込まれているような難解なところがあります。竹を描いていても、植物の力とか、そういう目に見えないものを描いている。西洋絵画のように一点透視図法のような世界観ではなく、どこを見て描いているのか、という戸惑いがない。消失点が単一でないところにも、すごく惹かれています。一般的な写真、特に写真で考えると、消失点がいくつもあるっていうのは、ありえない話ですが、そういう感覚は、自分もどこかに持っているかもしれないですね。